水道水から「カビ臭い」「飲みたくない」といった声が相次ぐ――。近年、各地で水道水のにおいに関する苦情が増え、ニュースでも取り上げられる機会が増えています。今回注目されているのは、“30年に一度”ともいわれる記録的少雨が引き金となり、河川環境が変化したことで「植物プランクトンが川底に発生し、カビ臭物質を放出した可能性」が指摘されている点です。この記事では、報道内容を踏まえつつ、水道水がカビ臭く感じる原因、人体への影響、家庭でできる対策、そして今後の見通しまでを、中立的にわかりやすく整理します。
水道水が「カビ臭い」と感じる苦情が殺到:何が起きているのか
水道水のにおいに関する苦情は、季節や地域によって増減します。特に、夏〜秋にかけては水温上昇や渇水などの条件が重なることで、原水(浄水場に入る前の川や湖の水)の水質が変化しやすくなります。
今回の報道では、記録的少雨により河川の流量が減少し、環境条件が変わった結果、植物プランクトンが増殖しやすい状況が生まれたことが背景として挙げられています。水道事業体(自治体の水道局など)は通常、においの原因物質を監視しながら浄水処理を行っていますが、急激な水質変化が起きると、通常運転の範囲では対応が難しくなるケースもあります。
「カビ臭」とは実際にどんなにおい?
一般に「カビ臭」と表現される水道水のにおいは、以下のような印象として語られることが多いです。
- ぬれた雑巾のようなにおい
- 土っぽい、泥っぽいにおい
- カビのようなにおい
- 貯水槽のようなにおい(と感じる人もいる)
ただし、においの感じ方は個人差が大きく、同じ水でも「気にならない」と感じる人がいる一方で、敏感に感じる人もいます。
原因は“30年に一度”の記録的少雨?少雨が水道水のにおいに影響する仕組み
少雨(渇水)になると、河川の流量が減り、水の滞留時間が長くなりがちです。これにより、水温・栄養塩・日照条件などのバランスが変化し、藻類やプランクトンが増えやすい環境になることがあります。
流量低下で起こりやすい水質変化
少雨時に起こりやすい変化として、代表的には次のようなものがあります。
- 水が動かず滞留しやすい(よどみやすい)
- 水温が上がりやすい
- 栄養塩が濃縮されやすい
- 河床(川底)付近で生物が増殖しやすい
- 取水地点の水質が短期間で変動しやすい
報道にある「植物プランクトンが川底に発生」という表現は、状況によっては付着藻類(川底の石などに付く藻)や底層で増える藻類の増殖も含めて説明している可能性があります。いずれにしても、藻類が増えると、においの原因物質が増加することがあります。
水道水のカビ臭の主因:カビ臭物質(ジェオスミン、2-MIB)とは
水道水の「カビ臭」の代表的な原因物質としてよく知られているのが、次の2つです。
- ジェオスミン(geosmin)
- 2-MIB(2-メチルイソボルネオール)
これらは、藍藻(シアノバクテリア)や放線菌などが産生することがある物質で、極めて低い濃度でも人がにおいとして感じやすい特徴があります。つまり、健康被害が起きるほど高濃度でなくても、「におい」だけが強く問題化することがあり得ます。
なぜ浄水場で取り切れないことがあるのか
浄水場では通常、凝集沈殿・ろ過・消毒などの工程で水をきれいにします。しかし、カビ臭物質は性質上、通常の処理だけでは十分に低減できない場合があります。
そのため状況に応じて、以下のような高度処理が必要になることがあります。
- 活性炭処理(粉末活性炭・粒状活性炭)
- オゾン処理
- 生物活性炭(BAC)などの組み合わせ
ただし、設備の有無、処理能力、原水の急変、活性炭の供給状況などにより、短期間で完全に抑えきれないケースも現実的には起こり得ます。
カビ臭い水道水は飲んでも大丈夫?健康影響と注意点
「カビ臭がする=危険」と直結するとは限りません。多くの場合、問題になるのは“におい(快・不快)”であり、直ちに健康被害が出るという意味ではないこともあります。
ただし、次の点は押さえておくと安心です。
自治体・水道局の発表を最優先に確認
においの原因や安全性の判断は、地域の水道局や自治体が行う水質検査・評価が基準になります。ニュースやSNSの情報だけで判断せず、公式発表(注意喚起、飲用可否、対策状況)を確認してください。
体調に不安がある場合は無理に飲まない
においが強いと、気分が悪くなる、飲水が進まないといった影響が出ることがあります。乳幼児、高齢者、基礎疾患のある方などで不安がある場合は、無理に飲まず、代替手段(市販水、備蓄水)を利用するのも選択肢です。
家庭でできる対策:カビ臭い水道水を改善する方法
においが気になるときに、家庭で実践しやすい対策をまとめます。状況や臭気の強さによって効果は変わるため、複数を組み合わせるのがおすすめです。
1)煮沸で軽減できる場合がある(ただし万能ではない)
においの種類によっては、煮沸で感じ方が変わることがあります。ただし、ジェオスミンや2-MIBは煮沸で完全に除去できないこともあり、過度な期待は禁物です。飲用する場合は、味やにおいが改善するかを少量で試してみるとよいでしょう。
2)浄水器(活性炭フィルター)を活用する
カビ臭対策として現実的に有効なのが、活性炭を用いた浄水器です。製品によって対応できる物質が異なるため、購入時は以下を確認してください。
- 「カビ臭」「2-MIB」「ジェオスミン」などへの対応表示
- カートリッジ交換頻度とコスト
- 使用水量に対する処理能力
また、カートリッジが劣化すると効果が落ちるため、交換時期を守ることが重要です。
3)冷やす・炭酸で割るなど「飲み方」を工夫する
においは温度で感じ方が変わることがあります。冷蔵庫で冷やす、麦茶やお茶にする、炭酸水で割るなどで飲みやすくなるケースもあります(ただし根本除去ではありません)。
4)受水槽・貯水タンクがある建物は管理状況も確認
マンションやビルなど、受水槽(貯水槽)を介して給水している場合、タンクの清掃・点検状況によってにおいが悪化することがあります。今回のように原水由来のにおいが原因でも、貯水設備の衛生状態が影響を上乗せする可能性があるため、管理会社への確認も有用です。
なぜ「今後も起こり得る」のか:気候変動と水道水リスク
記録的少雨のような極端現象は、将来的に増える可能性が指摘されています。降らない時期は降らず、降るときは集中豪雨になると、河川環境は安定しにくくなります。
その結果として、
- 渇水期:藻類・プランクトン増殖 → 臭気物質増
- 大雨後:濁度上昇・有機物増 → 浄水負荷増
といった、水道側の対応が難しい局面が増えることが考えられます。水道局は監視体制の強化や高度処理の導入などを進めていますが、設備投資には時間と費用がかかるため、短期的には「発生したら抑え込む」対応にならざるを得ない地域もあります。
苦情が増えたときの適切な行動:問い合わせ先と確認ポイント
においが気になる場合、感覚だけで判断して不安を大きくしないためにも、次の順で確認すると整理しやすいです。
確認1:自治体・水道局の公式情報
- 水質検査結果(臭気強度、原因物質の測定)
- 飲用に関する注意喚起の有無
- 対策(活性炭投入、取水調整など)の実施状況
確認2:自宅だけか、地域一帯か
- 近隣でも同様のにおいがするか
- 建物の給水方式(直結か受水槽か)
- 特定の蛇口だけか(キッチンのみ等)
確認3:浄水器や配管由来の可能性
- 浄水器カートリッジの交換時期
- 蛇口先端のストレーナー汚れ
- 長期間使っていない水の滞留(朝一番の水など)
必要に応じて、水道局の相談窓口に「いつから」「どの程度」「場所はどこか」「他の異常(濁り等)はあるか」を具体的に伝えると、原因切り分けが進みやすくなります。
まとめ:水道水のカビ臭は少雨と環境変化が引き金になることがある。公式情報の確認と現実的な対策を
水道水が「カビ臭い」「飲みたくない」と感じられる事象は、記録的少雨などによって河川の環境が変化し、藻類・植物プランクトン等が増殖してカビ臭物質(ジェオスミン、2-MIBなど)が増えることで起こり得ます。においが強いと不安になりますが、まずは自治体・水道局の公式発表や水質情報を確認し、必要に応じて浄水器(活性炭)や飲み方の工夫、備蓄水の活用など、現実的な対策を取ることが大切です。今後も気候の影響で同様の事例が起こる可能性があるため、日頃から「情報の確認先」と「家庭でできる対処法」を把握しておくと、落ち着いて対応しやすくなるでしょう。
