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「公益通報」を問う:12県警が5年間で公益通報ゼロ 「あり得ない数字」と専門家 - 毎日新聞最新情報まとめ

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「公益通報」を問う:12県警が5年間で公益通報ゼロ 「あり得ない数字」と専門家 - 毎日新聞最新情報まとめ

警察組織の不祥事や内部の問題が報じられるたびに、「内部からの通報は機能しているのか」という疑問が浮かびます。近年、日本では公益通報者保護制度の整備が進められてきましたが、現場でどれほど実効性があるのかは、数字や運用実態を見なければ判断できません。毎日新聞の報道によれば、12県警で「5年間の公益通報がゼロ」だったとされ、専門家が「あり得ない数字」と指摘しています。本記事では、このニュースのポイントを整理しつつ、公益通報制度の基本、警察組織における通報の難しさ、制度改善の論点を中立的に解説します。

ニュース概要:「12県警が5年間で公益通報ゼロ」とは何か

ニュース概要:「12県警が5年間で公益通報ゼロ」とは何か

報道の骨子は、「複数の県警で、一定期間(5年間)に公益通報として扱われた件数がゼロだった」という点です。公益通報は、組織内部の法令違反や不正を是正するための重要な仕組みであり、一般企業だけでなく公的機関にも関係します。にもかかわらず、一定数の職員を抱える県警組織で「5年間ゼロ」という結果が出たことに対し、専門家が「現実的に考えにくい」と疑問を呈した、という構図です。

この「ゼロ」が意味する可能性は一つではありません。例えば、次のような複数の解釈があり得ます。

  • 本当に通報すべき事案がなかった(可能性は低いと見られやすい)
  • 通報はあったが、公益通報としてカウントされていない
  • 通報があっても、別制度(ハラスメント窓口、監察、相談窓口等)に吸収された
  • 通報しにくい環境があり、そもそも通報が起きていない

つまり重要なのは、「ゼロ」という数字そのもの以上に、通報がどのルートで、どの基準で、どう分類され、どう処理されているかを丁寧に検証することです。

公益通報とは:制度の目的と基本

公益通報とは:制度の目的と基本

公益通報の定義(一般的な理解)

公益通報とは、組織内で起きている法令違反や不正行為について、従業員・職員などが一定の要件のもとで通報する行為を指します。日本では「公益通報者保護法」により、通報者が不利益取り扱い(解雇、降格、減給、嫌がらせ等)を受けないよう保護する枠組みが設けられています。

公益通報制度の狙いは大きく分けて次の2点です。

  • 違法・不正の早期発見と是正(組織の自浄作用を高める)
  • 通報者の保護(萎縮を防ぎ、声を上げやすくする)

通報先の類型:内部通報・行政機関・外部通報

公益通報は、通報先によって大きく分かれます。

  • 内部通報:組織内の窓口(コンプライアンス部門、監察、通報窓口など)
  • 行政機関への通報:監督官庁等への申告
  • 外部通報:報道機関や外部団体等(一定の要件がより厳格になり得る)

警察の場合、内部通報の制度設計や運用がどうなっているか、また内部以外の通報がどのように扱われるかが論点になりやすい領域です。

「公益通報ゼロ」が問題視される理由

「公益通報ゼロ」が問題視される理由

組織規模と業務特性から見た「ゼロ」の不自然さ

県警は一定規模の職員を抱え、捜査・交通・生活安全・警備など多様な業務を行います。権限も大きく、現場判断が連続する職務です。そのため、制度上の違反に限らず、運用上の問題、内部手続きの不備、ハラスメントや服務規律に関するトラブルなど、何らかの「相談」「申告」「指摘」が一定数発生すること自体は自然です。

もちろん、すべてが公益通報に該当するわけではありません。しかし、5年間という期間で複数県警が揃ってゼロとなると、次の疑問が生じます。

  • 公益通報として整理される基準が厳しすぎないか
  • 別の名目で処理され、統計上「ゼロ」になっていないか
  • 通報者が不利益を恐れ、制度を利用できていないのではないか

「通報がない」ことが「問題がない」ことを意味しない

コンプライアンスの世界では、通報件数が少ないことが必ずしも良い状態とは限りません。むしろ、健全な組織ほど「早期に小さな懸念が上がり、是正される」傾向があるとも言われます。通報がゼロの場合、次のようなリスクが考えられます。

  • 問題が潜在化し、外部に露出したときのダメージが大きくなる
  • 内部統制が効かず、再発防止が進まない
  • 現場の萎縮や沈黙が常態化し、組織文化が硬直化する

なぜ警察では公益通報が起きにくいのか:考えられる背景

ここからは、一般論として「警察のような規律型組織」で通報が難しくなり得る要因を整理します。特定の県警を断定するものではなく、制度設計を考えるための論点です。

指揮命令系統が強い組織文化

警察は階級・指揮命令が明確で、組織として統制が求められます。この特性は治安維持の面で重要である一方、内部の問題提起が「組織への反抗」「和を乱す行為」と受け止められやすい環境を生む可能性があります。

匿名性・秘匿性への不安

公益通報制度が機能するためには、通報者が「身元が守られる」「報復されない」と信じられることが前提です。ところが、閉鎖性が高い職場では、通報内容や状況から通報者が推測される懸念が残りやすく、結果として通報が抑制されることがあります。

「公益通報」に該当する範囲が分かりにくい

現場の職員からすると、「これは公益通報なのか、単なる相談なのか」「どの窓口に言うべきか」が分かりにくい場合があります。特に、ハラスメント、服務規律、業務運用の不適切さなどは、法令違反との線引きが難しいこともあります。

この結果、実際には申告があっても、公益通報として集計されず、別ルートで処理される可能性があります。

監察・内部調査との役割分担が曖昧

警察には監察など内部規律を担う仕組みがあります。公益通報窓口と監察がどう連携し、どう区分して扱うのかが明確でないと、通報が「監察案件」として処理され、公益通報としてはカウントされない、といった事態も起こり得ます。統計の読み解きには、この制度設計が重要です。

「ゼロ」を読み解く鍵:件数よりも運用の透明性

重要なのは「分類基準」と「プロセス」

公益通報件数がゼロであった場合、まず確認すべきは次の点です。

  • 公益通報の受付基準(どの法令違反が対象か、どこまでを通報として数えるか)
  • 相談・苦情・内部申告との区分方法
  • 受付後の手続き(調査開始の判断、通報者へのフィードバック、是正措置)
  • 不利益取り扱いの監視・救済の仕組み

「ゼロ」という数字が、制度の未整備を示すのか、分類の問題なのか、あるいは組織文化の問題なのかは、これらの情報がないと評価が難しいためです。

通報件数の公表と第三者性

公益通報制度の信頼を高めるには、個人情報や捜査情報に配慮しつつも、可能な範囲で以下を可視化することが有効とされます。

  • 受付件数(公益通報としての件数と、相談等の件数を分ける)
  • 類型(不正経理、情報漏えい、職権濫用、ハラスメント等の大分類)
  • 処理状況(調査実施、是正、懲戒、再発防止策などの統計)
  • 通報者保護に関する措置(不利益取り扱いの申立件数等)

さらに、内部だけで完結させず、外部有識者や第三者委員会的なチェックが入る設計は、通報者の安心感につながりやすいと考えられます。

公益通報者保護の観点:現場が安心して声を上げるために

通報者保護で重要な「報復リスクの低減」

制度があっても、通報者が「結局は自分が損をする」と感じれば利用されません。したがって、次のような実務的な配慮が重要になります。

  • 通報者情報へのアクセス権限を厳格に限定する
  • 調査過程で通報者が推測されないよう、情報の扱いを標準化する
  • 不利益取り扱いが疑われる場合の救済ルートを明確化する
  • 管理職・幹部への研修と、報復行為への厳正対応を徹底する

「通報しないほうが安全」という空気の是正

公益通報は、個人の勇気だけに依存させると長続きしません。組織として、「不正を見過ごさないことが職務に資する」という価値を共有し、通報を裏切りや告げ口とみなさない文化づくりが求められます。

警察と公益通報制度:今後の論点と改善の方向性

窓口の一本化と導線の明確化

現場の迷いを減らすには、通報・相談の入口を分かりやすくし、受け取った側が適切に分類して担当へ回す仕組みが有効です。「公益通報に該当しないから受け付けない」ではなく、「まず受け止め、適切な手続きに乗せる」運用が信頼につながります。

外部窓口の活用

外部の弁護士窓口など、組織から独立した受付先を用意することは、匿名性や心理的安全性の面で一定の効果が期待されます。特に警察のように内部関係が密な組織では、外部窓口の存在が「最後の逃げ道」になり得ます。

統計の整備:ゼロを生まない集計設計

「公益通報ゼロ」が実態を反映していない可能性があるなら、集計のルールを見直す必要があります。例えば、公益通報としての件数に加えて、関連する相談・申告の件数も併記し、全体像が分かる形で整理することが考えられます。数字の意味が明確になれば、外部からの監視も建設的になります。

よくある疑問(FAQ)

公益通報が増えると、組織が悪いということですか?

一概には言えません。通報が増える背景には、不正が増えた場合もあれば、制度の周知が進み「声が上がりやすくなった」結果の場合もあります。重要なのは件数の多寡だけでなく、是正措置や再発防止が機能しているかです。

「公益通報ゼロ」は違法なのですか?

数字がゼロであること自体が直ちに違法とは限りません。ただし、窓口が形骸化していたり、通報が握りつぶされたり、不利益取り扱いが放置されたりしているなら、制度趣旨に反し、別の法令・規律上の問題に発展する可能性があります。

まとめ:数字の衝撃より「制度が使われる条件」に注目を

毎日新聞が報じた「12県警で5年間公益通報ゼロ」という情報は、公益通報制度の実効性を考える上で大きな問題提起です。ただし、重要なのは「ゼロ」という結果を単純に善悪で判断することではなく、通報が公益通報として適切に分類・処理されているか、そして通報者が安心して制度を利用できる環境が整っているかを点検することです。

警察は高い公共性と強い権限を持つ組織であるからこそ、内部の自浄作用を支える仕組みが必要です。通報件数の透明性、外部性の確保、通報者保護の実効性、そして「声を上げても損をしない」職場文化。これらが揃って初めて、公益通報制度は社会の信頼を支える基盤として機能します。今後の続報や各県警の説明では、件数だけでなく運用実態と改善策に注目していくことが大切でしょう。

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